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佐藤愛子『九十歳。何がめでたい』(2016年、小学館)


近年、高齢の女性作家によるエッセイが、ベストセラーの上位に必ずと言っていいほど顔を出している。この数年のベストセラーを見ると、下重暁子『家族という病』、曽野綾子『人間の分際』、渡辺和子『置かれた場所で咲きなさい』といったシニア女性作家によるタイトルが上位に並んでいる。(日販調べ)この好調を支えているのは同じ高齢者の女性層である。

今回、ご紹介する佐藤愛子著『九十歳。何がめでたい』もそのような1冊である。2017年の年間総合ベストセラーの1位に見事輝いている。

本書のタイトルは『九十歳。何がめでたい』。日本そのものが超高齢化社会となった現在、長寿であることが珍しく、目出度い時代は、はるか昔のことになった。現在、90歳以上人口は全国で192万8千人である。ちょうど政令指定都市、札幌市の人口と同じである。もちろん介護状態の方もいらっしゃるが、そうならず元気にお暮らしの方々も多い。しかし、昨今の変化はきわめて急激である。その中には老人は含まれていない。

佐藤愛子は、それらに怒りを覚え、それをぶつける。スマホの使い方、接客のあり方、トイレ、修理サービスのあり方など。彼女が怒りを覚え、本書で指摘している事項は、多くの高齢者が「そうそう」と共感を覚えることだらけであろう。同じように感じながらも、戸惑いや怒りを覚えた先に文句を言えかった人々の代わりに怒りを表明してくれる存在。それが佐藤愛子が多くの人気を得ている理由なのだろう。

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