橘木俊詔『中年格差』(2020・青土社)
バブル崩壊による不況のあおりを受け、正規雇用に就くことが適わなかった就職氷河期世代の現在の姿を格差という視点から描き出している。 中年格差というタイトルであるものの、本書の前半(第1章〜第4章)は、格差全般に関する記述である。 第1章は、世代別の格差を幼年期・若年期・中年期・高年期に分けて論じている。世代別に見える格差は、それぞれの世代が生まれ育った時代環境と密接に関係している。その中で、幼児期、若年期における格差は親の貧困と密接に関係していること、中年期における現況の格差は就職氷河期における就業状態と関係が深いこと、高年期における貧困問題は高齢単身高齢者に高いことなどがあきらかにされている。 第2章は、中年格差の元凶である就職氷河期における非正規雇用について論じている。1990年代初頭に学卒であった彼らの多くが、30代後半から40代を迎えた現在においても尚、非正規雇用におかれている状態であることが明らかにされる。第3章は未婚、既婚、離婚という婚姻を巡る格差問題についてである。生涯未婚率、離婚率の上昇が結果として貧困率の上昇を招いていることが明ら
