橘木俊詔『中年格差』(2020・青土社)
バブル崩壊による不況のあおりを受け、正規雇用に就くことが適わなかった就職氷河期世代の現在の姿を格差という視点から描き出している。 中年格差というタイトルであるものの、本書の前半(第1章〜第4章)は、格差全般に関する記述である。...
B・F・スキナー博士『初めて老人になるあなたに ハーバート流知的な老い方入門』(2012年、成甲書房)
B・F・スキナー博士といえば行動主義心理学の第一人者。一般的には「オペラント条件付け」の発見者として良く知られている。例えば、レバーを引く→餌が出る、という経験を繰り返すことで、自発的にレバーを押すようになる、いわば「報酬系の強化」理論を提唱した方だ。...
『孤立不安社会』つながりの格差、承認の追求、ぼっちの恐怖(石田光則著、勁草書房、2018年)
近年の社会状況を極めて的確に表現した書名である。著者は、現在早稲田大学文学学術院教授(社会学)。未読であるが、過去にも『孤立の社会学』『つながりづくりの隘路』『郊外社会の分断と再編』などの著書があり、長年、孤立、つながり・ネットワーク、郊外などのテーマに取り組まれているよう...
パット・ムーア『私は三年間老人だった 明日の自分のためにできること』 (2005年、朝日出版社)
書名に表されているとおり、この本が書かれた1980年当時、まだ20代のうら若き女性研究者であったパット・ムーアが老婆に変装し、実際に彼女自身が変装を通じて感じた「老人世界」を表現したものである。 「変装」といっても、単なる簡単コスプレメイクではない。たまたま知り合った友人が...
西垣千春『老後の生活破綻』(2011年、中公新書)
数年前、ベストセラーになった藤田孝典『下流老人』(2015年、朝日新書)は、多くの高齢者がふとしたきっかけで生活困難に陥り、下流老人化となる可能性があると警鐘を鳴らした書籍であった。それに先立つ2011年に発行された本書の主張も同様である。しかし、藤田氏が社会実践家としての...
佐藤愛子『九十歳。何がめでたい』(2016年、小学館)
近年、高齢の女性作家によるエッセイが、ベストセラーの上位に必ずと言っていいほど顔を出している。この数年のベストセラーを見ると、下重暁子『家族という病』、曽野綾子『人間の分際』、渡辺和子『置かれた場所で咲きなさい』といったシニア女性作家によるタイトルが上位に並んでいる。(日販...
宮本太郎『共生保障<支え合い>の戦略』(2017年、岩波新書)
本書は、長く福祉国家のあり方や準市場の可能性について研究を重ねてきた宮本太郎中央大教授による新たな社会保障の可能性を「共生保障」というキーワードを軸に語られたものである。 「共生」という言葉は、安倍政権下でも平成28年に閣議決定された「一億総活躍プラン」の中にも「地域共生社...
赤瀬川原平『老人力』(1998年、筑摩書房)
赤瀬川原平は、現代美術家としてキャリアをスタートさせ、その後、尾辻克彦名で芥川賞を受賞。それ以降は、ふたつの名前を使い分けつつ、数多くの小説、エッセイ、国内外美術・芸術に関わる論考を残した。2014年に残念ながらお亡くなりになったが、おそらく本人は、最後まで自分は現代美術家...
若林靖永・樋口恵子編『2050年超高齢社会のコミュニティ構想』(2015年、岩波書店)
本書は、公益財団生協総合研究所による「2050研究会」の報告書をとりまとめたものである。研究会のテーマは、「今後、超高齢・少子・人口減少、単身社会にが進む2050年の地域コミュニティにおいて、生活協同組合が果たすことが出来る機能・役割は何であるか」というものである。...
小谷みどり『〈ひとり死〉時代のお葬式とお墓』(2017年、岩波新書)
長年、葬儀やお墓分野での研究を続けてきた著者、小谷みどり氏による論考である。あとがきで、「私の今までの調査や研究の集大成」と述べている通り、新書にも関わらず、内容は極めて数多くの調査データや事例に裏打ちされて、現在の葬儀とお墓の動向人々のこの分野に関する意識を知りたければ、...