小谷みどり『〈ひとり死〉時代のお葬式とお墓』(2017年、岩波新書)
長年、葬儀やお墓分野での研究を続けてきた著者、小谷みどり氏による論考である。あとがきで、「私の今までの調査や研究の集大成」と述べている通り、新書にも関わらず、内容は極めて数多くの調査データや事例に裏打ちされて、現在の葬儀とお墓の動向人々のこの分野に関する意識を知りたければ、...
菊池まゆみ『「藤里方式」が止まらない』(2015年、萌書房)
秋田県北部にある藤里町、人口3600人、高齢化率42%の小さな町、藤里町が一気に全国的に有名になったのは、その町の福祉協議会が、引きこもりの就労支援にいち早く取り組み、一定の成果を収めたからである。 社協として就労支援訓練の場として飲食店「こみっと」を経営し、引きこもりの若...
古宮昇『共感的傾聴術 精神分析的に“聴く”力を高める』(2014年、誠信書房)
本書が対象とする心理技法はロジャースの来談者中心療法である。ロジャースは、カウンセラーの態度条件に、(1)自己一致、(2)無条件の肯定的関心、(3)共感的理解が重要と指摘する。クライアントが表現できない感情を共感的に理解し、カウンセラーが言語化し、明確にすることが、来談者中...
永島徹『必察!認知症ケア 思いを察することからはじまる生活(いき)ること支援』(2008年、中央法規出版)
本書は、栃木県で独立型社会福祉士、ソーシャルワーカーとして活動を続けられている永島徹氏の彼自身の活動から得た実践的「認知症ケア」論である。 タイトルになっている「必察」は、著者永島氏の造語で、認知症ケアを実践する際の最重要ワード、すなわち「相手の思いを察する」ことを意味して...
上野千鶴子『40才からの老いの探検学』(1990年、三省堂)
上野千鶴子のベストセラー『おひとりさまの老後』の発売は2007年。この年に日本人の高齢化率は21%を越え、当時「おひとりさま」は多くの人々の関心を集めた。 本書『40才からの老いの探検学』は、それに先立つ17年前、彼女による(おそらく)初めての高齢者をテーマとした書籍である...
吉本佳生『L70を狙え! 70歳以上の女性が消費の主役になる』(2014年、日本経済新聞出版社)
L70とは70代女性のことである。70歳以上の女性が消費の主役になるという本書のサブタイトル主張を本文から要約すると以下の通りになる。 ・人口減少社会の中、70歳以上の人口はこれから大幅に増える ・女性の方が寿命が長いため、70歳以上は女性が中心(L70)になる...
吉本隆明『老いの越え方』(2009年、朝日文庫)
本書は、吉本隆明による自らの老いの観察記録である。年、彼自身「老いる」ことに対して関心が高まったようで、本書を刊行した2009年(82歳)以前にも、2000年(76歳)に『<老い>の現在進行形』(春秋社)、2002年(78歳)に『老いの流儀』(NHK出版)を刊行している。本...