西垣千春『老後の生活破綻』(2011年、中公新書)

March 25, 2018

 

 数年前、ベストセラーになった藤田孝典『下流老人』(2015年、朝日新書)は、多くの高齢者がふとしたきっかけで生活困難に陥り、下流老人化となる可能性があると警鐘を鳴らした書籍であった。それに先立つ2011年に発行された本書の主張も同様である。しかし、藤田氏が社会実践家としてのソーシャルワーカー的視点から『下流老人』というある意味でエキセントリックなタイトルをつけたのに対し、本書では比較的穏やかな『老後の生活破綻』という書名がつけられている。

 

 本書では、高齢者が生活破綻に陥る可能性を統計的マクロデータから、加えて実際のケーススタディというミクロデータ両面から体系的にまとめている。

 

 最初に「高齢社会の現実」では、「健康状態」「家族関係」「家計の状況」が高齢期においてどのような変化し、どのような問題を引き起こす可能性があるのかを整理する。そして、単独世帯の増加、地域組織の希薄化、経済的に苦しい高齢者の増加などが大きな環境要因であるとされる。

 

 続く事例で見る生活破綻では、生活困窮や破綻に至る原因として、「本人の判断力低下」「健康状態の変化」「近親者による経済的搾取」「子どもが親に経済的依存」「予期せぬ事故・災害」「詐欺による被害」の6パターンがあると指摘する。その中で、比率として多いのは、「健康状態の変化(病・外傷)」と「本人の判断力の低下(認知症等)」(約半数)であるが、実は「詐欺等の被害」「近親者による金銭搾取」なども生活困窮に陥る原因の4分の1を占めている。(大阪社会貢献事業データ)。

 

 生活困窮に陥いって手遅れにならないためには、陥る前の生活変化に注意する必要があると説く。それらは、「身近な人の闘病や死」「家族メンバーの変化や出入りする人の変化」「普段と違う行動への変化」「持病の治療中断」「高齢になってからの転居」「家賃、公共料金の滞納」などである。

 近年、生活困窮者自立支援法が制定され、生活保護状態となる手前での自立支援を促す方向性が示されてはいるがその対策が未だ十分ではない。上記のような変化を上手く生活支援、援助に結びつけて行くような地域社会の構築が望まれるところである。

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