宮本太郎『共生保障<支え合い>の戦略』(2017年、岩波新書)

December 22, 2017

 本書は、長く福祉国家のあり方や準市場の可能性について研究を重ねてきた宮本太郎中央大教授による新たな社会保障の可能性を「共生保障」というキーワードを軸に語られたものである。

 

 「共生」という言葉は、安倍政権下でも平成28年に閣議決定された「一億総活躍プラン」の中にも「地域共生社会の実現」と表現されているように、近年良く耳にする言葉でもある。

 

 本書において筆者は、「地域で人々が支え合うことを困難にしている事態をいかに打開し、共生を可能にする社会保障をどう設計するか」を実現するための制度構想を「共生保障」と呼び、その方向性を示そうとしている。

 

 具体的な共生社会の構築の方向軸として示されているのは、「ユニバーサル就労」「共生型ケア」「共生のための地域型居住」「補完型所得保障」などである。

「ユニバーサル就労」では、より柔軟な形の就労コーディネイトの必要性やベーシックワーク(ベーシックインカムの仕事バージョン)の可能性が言及される。

「共生型ケア」では、当事者同士の支え合いから、支援付き就労に繋げていく試みが、「共生のための地域型居住」では、ナガヤタワー、シェア金沢などの事例と共にごちゃ混ぜ型の住まい方の可能性が語られる。また「補完型所得保障」では、ベーシックインカム型所得保障や給付付き税額控除の可能性が語られる。

 

 いずれも従来、福祉で措置の対象であったものを自立支援の促進や社会との接続を図ろうとするもので、おおむね今世紀以降志向されてきた福祉制度改革の方向性と軸を同一にするものだ。

 

 しかしながら、このような一連の社会保障制度改革の流れ、具体的には普遍主義制度改革を目指し、措置から契約という準市場化が目指されたものの、結果として市場化に近い形で展開されてしまい、改革が空転してしまった理由として、財源不足、措置的意識からの脱却が出来ない自治体、雇用の劣化による中間層の解体が理由にあったのではと説く。

 

 多様な事例と考察は極めて示唆に富んでいるが、冒頭で脱構築を試みようとした地域におけるNPOや民間の事業体による共生のための多様な試みなどの「好事例」が、結局の所、まだ制度的改革提言の一部に留まっているような印象も受けた。また福祉領域のみならず、一般健常者の共助、互助の仕組みに触れている部分が少ないところも気になる所ではある。より限定された領域ではない、広く国民に問題喚起を行う「共生社会」のあり方を考えていく必要もあるのではないだろうか。

 

 

 

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