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小谷みどり『〈ひとり死〉時代のお葬式とお墓』(2017年、岩波新書)


 長年、葬儀やお墓分野での研究を続けてきた著者、小谷みどり氏による論考である。あとがきで、「私の今までの調査や研究の集大成」と述べている通り、新書にも関わらず、内容は極めて数多くの調査データや事例に裏打ちされて、現在の葬儀とお墓の動向人々のこの分野に関する意識を知りたければ、この一冊を読むだけで十分といった充実ぶりである。

 葬儀やお墓に関わる人々の意識は、近年大きく変化してきている。著者によると、従来は生きている人が葬儀やお墓について語ることは少なかったが、長寿化が進み、家族のあり方も変化し、一人暮らしが増加した1990年前後からこの分野に関する意識が高まってきたという。

 死亡者の増加により、中長期的には墓地が不足し、埋葬のあり方も変化が生じるかもしれない。高齢化に伴い葬儀は、簡素化が志向されるようになる一方で、画一的ではない自分らしい葬儀を行いたいと考える人も増えてきている。墓石のあり方も、従来の「・・家の墓」という形から自分らしさが志向され、散骨、樹木葬、手元供養といった墓を持たない形を希望する人々も増加している。

 このようなさまざまな終末期を巡る動向を、著者はつぶさに観察し論考を加えている。このジャンルに興味がある人はまず最初に読むべき一冊である。

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