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永島徹『必察!認知症ケア 思いを察することからはじまる生活(いき)ること支援』(2008年、中央法規出版)


 本書は、栃木県で独立型社会福祉士、ソーシャルワーカーとして活動を続けられている永島徹氏の彼自身の活動から得た実践的「認知症ケア」論である。

 タイトルになっている「必察」は、著者永島氏の造語で、認知症ケアを実践する際の最重要ワード、すなわち「相手の思いを察する」ことを意味している。

 本書で一貫して語られる著者の主張は、介護ケア、認知症ケアに対して向き合う際には、物理的な介護援助技法や認知症ケア技法のみを習得するのではなく、その人の生活そのものを援助・介護していくという姿勢を持つことが重要であるという主張である。

 認知症ケアに対する向き合い方には、①本人に対する関わりに加え、②その人の生活を支える「家族」への働きかけ、③生活の場である「地域社会・地域の人」への働きかけ、④①〜③の関係性(つながり)への働きかけが重要であると説き、往々にして意思伝達が図れず、思いと行動がいびつな形で出てしまいがちな認知症の方に対しては、想像力、内省力、伝達力を駆使して「察する」ことが重要であると語る。

ここで一貫して語られる内容は、相談援助の基本ともいえる臨床心理学者のカール・ロジャースが唱える「傾聴」や、臨床心理学者トム・キッドウッドの提唱する「パーソン・センタード・ケア」とも通じるところがある。が、本書が面白いのは、それが彼自身の実践的体験としてを語られるところである。本書の後半で語られているのは、彼自身が施設で体験した認知症ケアの実践例であり、この実践例を通じて、わたしたちは彼の主張がリアリティを持ちながら理解することが出来る。

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